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事実婚は法的に入籍をしていなくても、社会的には夫婦といえる状態です。
一定の条件を満たし事実婚を証明する書類があれば、法律婚の夫婦と同じような権利や制度が与えられます。
では、事実婚にはどのような手続きが必要なのでしょうか。事実婚に関わる手続きや事実婚を証明する書類についてご紹介します。
目次
事実婚の手続き
事実婚に求められる要件は、双方に婚姻の意思があり共同生活(同一生計)を営んでいることですから、事実婚をするにあたり特別な手続きは必要ありません。
ただし、事実婚において法律婚の夫婦と同等の権利やサービスを受けるためには、 夫婦関係の事実を証明する必要があります。
では、実際にどんな場面で事実婚の証明が必要になるかをみていきましょう。
事実婚の証明が必要なケース
事実婚は戸籍で夫婦の確認をすることができません。そのため、配偶者として手続きをする場面で事実婚の証明が必要になります。
証明が必要なケースの一例をご紹介します。
- 健康保険の被扶養者になる場合
- 厚生年金の被保険者になる場合
- 生命保険等の受取人になる場合
- 夫婦でローンを借り入れる場合
- 遺族年金の請求や受給をする場合
- 公共賃貸住宅に申し込みをする場合
- 事実婚解消時の慰謝料請求や財産分与
これらはあくまでも一例ですから、勤務先や保険会社によって扱いや対応は異なります。
日常生活ではこのような場面はそう多くありませんが、勤め先の配偶者手当や保険の配偶者加入、保険金の受け取りなど、起こり得る事態に備えておくことも大切ですね。
事実婚を証明するもの
事実婚の証明が必要になる場面がわかったところで、事実婚を証明できるものについてご紹介します。
住民票
住民票は、事実婚を判断する公的書類の中で最も有力な証拠になるものです。
同一世帯で、住民票の続柄に「妻(未届)」や「夫(未届)」と記載されていれば、双方に婚姻の意思があり入籍をしていないことが確認できます。
公正証書の作成
公正証書とは、婚姻関係を結んだ後にお互いの義務や権利をまとめた契約書のことで、公証役場で作成されます。
法律婚において義務づけられる内容だけでなく、子どもの親権や契約解除(離婚)に関する項目についても記すことができます。
パートナーシップ制度
パートナーシップ制度は、事実婚の異性間カップルや同性婚を望むカップルに対して「結婚に相当する関係」を認め、証明書などが交付されるものです。
パートナーシップ制度は市町村レベルで導入されており、受けられるサービスの内容は自治体によって異なります。
法的な効力はありませんが、本人の代わりに手術の同意ができたり民間サービスが受けやすくなったりするなど、法律婚の夫婦と同じように対応してもらえることもあります。
賃貸借契約書上の記載
事実婚によって新たに賃貸借契約を締結した場合、同居人欄の続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」、「配偶者」などと記載されていれば有効な証拠になる可能性が高いでしょう。
健康保険の被扶養者欄
健康保険の被扶養者になっている場合も有力な証拠になり得ます。
例えば、男性側がサラリーマンの場合、勤務先から健康保険証が発行されます。そこであなたの健康保険証も同じ勤務先から発行されていれば、男性側の健康保険の被扶養者となっている事になるのです。
民生委員発行の証明書
遺族年金等を保険会社に請求すると、このような民生委員発行の事実婚証明書や内縁関係証明書を要求されることもあります。
民生委員会所属の民生委員による事実婚証明書や内縁関係証明書も証明の一つとして考えられます。保険会社によっては民生委員発行の書類を要求されることもあるようです。
ただし、以下の点に留意すべきだといわれています。
- 証明書を発行するかは、地域差や民生委員の考え方によってばらつきがある
- 証明書の裏づけとして、民生委員がどこまでの資料を確認したかがポイント
- 資料の確認だけでなく、どのような事実関係から証明書を発行したかも重要
民生委員が発行する証明書は、証明書の内容次第で有力な証拠になる可能性もあれば証拠価値が低い場合もあるので、依頼する際は注意が必要です。
結婚式の挙行
結婚式や披露宴の実施は、お互いに婚姻の意思をもっていた証拠になります。ですから、結婚式を挙げる際は契約書や資料をできるだけ保管しておきましょう。
ただし、結婚式の挙行や資料だけでは証明書としての効力は低いので、有力な証明書と合わせて準備しておくことをおすすめします。
事実婚を証明できる書類は意外と多い!
事実婚のカップルは法律婚に準じる関係として認められますが、夫婦であることを証明するのが難しい側面もあります。
事実婚に必要な手続きはないとはいえ、万が一に備えて事実婚を証明するための資料を揃えておくのは大事なことです。
事実婚を証明する書類は様々ですが、種類により証明書としての効力には差があります。安心して事実婚の生活ができるよう、用意できるものを複数揃えておくと良いかもしれませんね。