【婚前契約徹底ガイド】契約内容、効力、メリット・デメリットなど幅広く紹介!

契約を結ぶカップル©Antonioguillem- stock.adobe.com

婚前契約」という言葉をご存じですか?簡単に説明すると、結婚を控えたカップルが交わす、結婚に関する約束事のことを指します。

二人で内容を練り上げ、契約書を作成することで、結婚後の生活をより円滑に送ることができたケースもあるのだとか。

日本ではまだまだ馴染みのない婚前契約とは、一体どのような契約なのでしょうか。詳しくご紹介していきます。

婚前契約とは

婚前契約とは、結婚生活におけるルールや離婚時の財産分与の方法など、結婚に関する約束を定め、入籍前に契約を交わすことを指します。

日本ではあまり浸透していない考え方ですが、アメリカなどの国では広まりつつあるようですよ。

婚前契約書を作成する際は、体裁にこだわらず書面にまとめる方法と、公証役場に赴いて公正証書を作成する方法の二つに分けられます。

前者は私文書扱いになりますが、内容が公序良俗に反していなければ契約書として十分な効力を発揮するのだとか。

結婚に関する約束と一口に言っても、その内容は多岐に渡ります。具体的にどのような取り決めをすることが多いのか、例をご紹介していきます。

婚前契約書に記す内容の例

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婚前契約書の内容は、当然ながら夫婦によって異なります。シンプルな内容にまとまっている場合もあれば、数十ページに渡って細かい制約が掛けられている場合もあるそう。

「必ず〇項目以上の内容にしなければならない」ということは無く、お二人にとって最適な長さの契約にするのがベストですよ。

婚前契約書に記す内容の例を下表にまとめましたので、契約書作成時の参考としてご活用してみてくださいね。

項目 内容の例
夫婦の約束 ・家庭や仕事に関わる事柄は、独断ではなく都度相談して決める
・月に一回は必ず二人で食事に行く
・いかなる時もお互いを尊重し、誠意を持って向き合う
生活のルール ・家事は完全折半とする
・帰宅時間が遅くなる場合は必ず連絡を入れる
・外出しての飲酒は最大週3回まで
・円満な家庭を築くための努力を惜しまない
親族との関わり方 ・お互いの両親を尊重する
・親の介護は実子が行い、自分の親の介護を相手に強制しない
・お互いの実家への帰省回数は対等にする
子どもについての取り決め ・育児の負担が偏らないよう最大限の努力をする(育児休暇の取得や時短勤務への切り替えなど)
・学校行事には、やむを得ない場合を除き夫婦で参加する
・子どもは作らない
家計について ・家賃や生活費は完全折半とする
・原則、妻が夫婦の収入を一括管理する
・収入額に変動があった際は速やかに報告する
浮気や不倫発覚時の決めごと ・不貞が発覚した場合は慰謝料として200万円を支払い、離婚の判断をすべて相手に委ねる
・不倫が確定したら即刻離婚とし、不倫をした側は共有財産の所有権をすべて放棄する
離婚に関する取り決め ・婚前契約に記載されている約束を守らず、改善の余地が見られない場合は離婚とする
・離婚の原因となるような行為があった場合、原因を作った者は共有財産および親権をすべて放棄する
・肉体的・精神的な加害行為が行われた場合速やかに離婚協議をし、暴力行為を行った側には決定権を与えない

きっちりとした取り決めから、少し微笑ましくなるような約束まで、婚前契約にはさまざまな項目を盛り込むことができます。

どちらかが一方的に要求を押し付けるのではなく、両者の希望を盛り込みながら、お互いが納得できる内容になるようにブラッシュアップをしていきましょう。

婚前契約書に法的効力はある?

婚前契約書に記載されている内容のうち、すべてに法的効力があるわけではありません。ここで言う法的効力のある条項とは、契約書の内容のみを根拠に高確率で勝訴が実現できる条項のこと。

つまり、万が一契約の不履行があった場合に損害賠償請求ができ、その裁判の判決に対し強制執行できる契約を「法的効力がある」と表します。

ちなみに、婚前契約書における法的効力のある条項とは、結婚生活における金銭についての条件のみを指し、それ以外の条件については法的な効力は無いのだそう。

「だったら婚前契約書の内容は金銭面だけに絞ればいいのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、金銭以外の条件がまったくの無意味というわけではありません。

お二人の間で交わされた契約、つまり「合意の上での約束事」は、結婚生活に節度と誠実さを与えます。

たとえ法的効力が発揮されなくとも、お二人の認識をすり合わせて作り上げた契約内容は、結婚生活を円満に送るためのキーポイントになり得るでしょう。

この先の人生をより良いものにするため、そしてより強固なお二人のコミュニケーションのためにも、婚前契約書を作ってみてはいかがでしょうか。

婚前契約を交わすメリット

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婚前契約には少し堅苦しい印象があるという意見もあるようですが、契約を結ぶことによってどのようなメリットがあるのでしょうか。

結婚前に価値観のすり合わせが十分にできる

婚前契約の内容を真剣に練ろうとすればするほど、結婚に対してお互いがどのような意識でいるのかを知ることができます。

結婚前に価値観のすり合わせをとことんすることになるため、結婚後に「こんなはずじゃなかったのに」というギャップに苦しむリスクを回避できるでしょう。

もし絶対に相容れない部分が発覚し、お互いに譲れないことが分かっても、結婚前なので別れを切り出すハードルが高くありません。

婚前契約書をお二人で作り上げることで、安心して結婚に踏み切ることができたという声もあるようですよ。

結婚生活のトラブルが格段に減るケースも

結婚生活を送る上で起こりやすいトラブルとして、家事の分担やお金の使い方がよく挙げられますよね。

結婚前の口約束が守られず、どちらか一方に負担がのしかかったことが原因で、最終的に離婚に至ってしまうこともあるのだそう。

ですが、婚前契約を結んでおくことで、上記のようなトラブルが格段に減ったというケースもあるようです。

なあなあになりがちな口約束ではなく、書類を通した契約を交わすことで、一度決めたルールを守ろうという気持ちが高まりやすくなるのではないでしょうか。

万が一離婚する際に手続きがスムーズになる

「結婚する前から離婚のことを考えるなんて身も蓋もない」という意見もあるとはいえ、世の中に絶対というものはありません。

したがって、婚前契約を結ぶ際には離婚をする条件や財産分与についても決めておくべきでしょう。

特に、離婚時に一番揉めやすいお金のことは、より事細かく定めておけば後が楽です。

一度は結婚した相手と限界までいがみ合ってから別れるよりも、揉め事が起こらないよう事前に手を回し、スマートに別れた方が後腐れもありませんよね。

相手との関係をできる限り尊重するための布石として、婚前契約を交わしてみてはいかがでしょうか。

婚前契約を交わすデメリット

続いて、婚前契約を交わすデメリットについてご紹介していきます。メリットと比較し、婚前契約がお二人に合っている制度なのか否かを見極めましょう。

相手が難色を示す場合がある

結婚生活が始まる前から、契約でガチガチに縛られるのは気分が良くないということで、婚前契約に対して相手から難色を示されてしまう場合も考えられます。

根気強く説き続けるのも一つの手ですが、あまり無理強いをすると結婚の話そのものが白紙になってしまいかねません。

「私だけでなく、二人の意見を取り入れて契約内容を練り上げるんだよ」という前提を伝えてもなお拒否されるようなら、婚前契約か結婚のどちらかを諦めるしかないでしょう。

結婚前から離婚の想定をしなければならない

結婚直前の幸せな雰囲気の中、離婚にまつわる契約内容を考えるのは嫌だと感じる人もいるそう。

「幸福ムードに水を差すような行為に思える」「縁起でもない気がする」などの理由から、嫌悪感を覚えてしまうようですね。

結婚前に相手の本性が発覚することも

婚前契約を結ぶことで合意が得られたものの、相手にしか得が無い条件を一方的に押しつけられたり、逆にこちら側の意見を一切取り入れてくれなかったりと、思いがけないトラブルに見舞われてしまうことも。

最悪、意見が行き違うばかりで話が平行線になり、破談になってしまう可能性も考えられるでしょう。

ですが、これは見方を変えれば「結婚前に相手の本性が分かってよかった」とも考えられますので、あまり悲観的になりすぎることはないのではないでしょうか。

婚前契約書を公正証書にすることはできる?

公正証書©Masakazu-Sonoda- stock.adobe.com

婚前契約書を、公正証書にしたいとお考えの方もいらっしゃるようです。しかし、その方法がよくわからないため、二の足を踏んでしまうケースもあるのだとか。

婚前契約書を公正証書にするためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。詳しくご解説していきます。

公正証書とは

まず始めに、公正証書についてのご説明をしていきます。公正証書とは、公証役場という機関にて、公証人に作成してもらう公文書を指します。

ちなみに、上記の手続きを介さず、個人的に作り上げた契約書のことを私文書といいます。マンションなどの賃貸借契約書などが、これに属するそうですよ。

私文書でも内容が正当であれば、条項によっては法的効力を十分に発揮します。ですが、公正証書にすることで、法的な効果をより高めることができます。

公的機関の証明を得た契約ということで、重みのある約束をお互いに課すことができるでしょう。

婚前契約書を公正証書にするのは手間だが可能

婚前契約書を公正証書にすることは、手間は掛かるものの可能です。ただし、数万円から数十万円の費用が必要になる上、正式な認証を得るまでに2ヵ月程の時間を要します。

婚前契約書は、たとえ私文書だったとしても金銭的な条件については裁判で十分に効力を発揮しますので、特に旨みを感じないのであれば無理に公正証書にしなくても構いませんよ。

公正証書を作成する流れ

公正証書を作成する流れを下表にざっくりとまとめました。

公正証書を作成する流れ
①原案となる契約書の作成 まずはお互いに案を出し、原案となる契約書の作成を行います。無効だったり、曖昧な内容が多いと公正証書の作成を受けてもらえない可能性があるので、十分に案を練り上げる必要がありますよ。
②公証役場に連絡し面談予約をする 最寄りの公証役場に連絡し、面談の予約をします。WEB予約に対応している役場もありますが、そうでない場合は直接連絡しましょう。公正証書の概要を伝え、訪問時に必要な持ち物の確認なども忘れないようにしてくださいね。
③公証人と内容の確認 公証人と共に、公正証書に記載する内容をすり合わせます。この時、原案を用意しておけば打ち合わせの回数は最低限で済む場合が多いそうです。公証人から契約の内容について質問されることが想定されるので、スムーズに答えられるよう準備をしておきましょう。
④公正証書が完成したら調印を行う 公正証書が完成しても、即日で調印をすることはできません。なので、別日に公証人の前で調印を行うことになりますよ。

より詳しい流れを知りたい方は、法律事務所や行政書士事務所、司法書士事務所などにご相談をしてみてくださいね。

婚前契約書の作成には弁護士の手を借りるべき?

婚前契約書は私文書でも効力がありますので、必ずしも弁護士に相談する必要はありません。

ですが、裁判での効力がより強い公正証書にしたいなら、契約書の作成には弁護士の手を借りることをおすすめします。

法律に関してはあまり明るくないという方や、豊富な知識や経験を持つ専門家からの意見を取り入れたいとお考えなら、ぜひご相談してみてはいかがでしょうか。

婚前契約を結ぶ際の注意点

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婚前契約を結ぶ際の注意点をいくつかまとめました。事前に確認しておき、不備の無いよう気をつけましょう!

必ず結婚前に契約を交わすこと

通常、一度契約を結んでしまえば、詐欺などの特別な事情がない限りその契約を取り消すことはできません。

ですが、夫婦間で行われた契約に関してはその限りではなく、婚姻中はいつでも夫婦の一方から契約を取消すことが可能です。

そのため、せっかく時間をかけて婚前契約書を作り上げたとしても、契約を交わす段階が結婚後になれば努力が水泡に帰してしまいます。婚前契約は必ず結婚前に交わすよう、ご注意くださいね。

契約内容は双方の同意がないと変更できない

婚前契約の内容は、財産に関係する事項を除き、結婚後も変更が可能です。

ただし、双方の同意がない限りは変更はできませんので、内容の追加や削除をする際は夫婦で話し合って決める必要がありますよ。

契約書に記載しても無効になる内容もある

たとえ婚前契約書に定めた内容だとしても、公序良俗に違反している内容は無効になる場合があります。例えば、

  • 男女差別な内容
  • 一方的かつ倫理に反した内容
  • 親権をどちらにするか

などの取り決めは、意味をなさないケースがあります。どのような内容が公序良俗に違反しているとみなされるのか知りたい方は、弁護士などの専門家にご相談してみてくださいね。

パートナー同士が納得できるのなら婚前契約書を交わすのもアリ

契約内容検討中©Natee-Meepian- stock.adobe.com

婚前契約書は、うまく使えば結婚生活を円満に、そして円滑に送るためのツールとしてかなり有効です。

もしパートナー同士が納得できるのなら、婚前契約を交わすことは大いにアリでしょう。

結婚式という思い出の中だけでなく、書類という形に残る契約が、お二人の仲をより強く結び付けてくれるかもしれませんよ。

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