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結婚にまつわる習わしや作法は、同じ日本であっても地域や年代によってさまざまです。結婚式には、ご祝儀や披露宴、ゲストのマナーにまで、その地域ならではの文化やマナーが反映されます。
ただし、最近では結婚式のスタイルも多様化されてきたことにより、地域性は年々薄まっている傾向にあります。
その中でも、婚礼文化の発祥地の一つである京都には、後世に伝え続けたい習わしがいくつかあります。
そこで、継承し続けたい結婚式にまつわる「京都の習わし」を、ご紹介していきたいと思います。
目次
京都の結婚式にまつわる習わし
古くからの慣例を受け継いできたしきたりは、各家庭によっても違ってきます。
時代と共に、結納や結婚式などのお祝い事に伝わる風習は、簡略化する傾向が高まっていますが、日々の暮らしから生まれた数々のしきたりには、それぞれの学びや教えがあります。
1200年以上の歴史を刻む京都には、そういった先人の教えや知恵を反映した習わしが数多く存在しています。長く都として栄えた京都は、政治と文化の中心地であったため、独自の文化を築き上げていきました。
次からは、現代にも伝わる「おため」や「扇子交換の儀式」など、京都ならではの習わしを、結納儀式の方法と併せていくつかご紹介していきたいと思います。
京の習わしが魅力!伝統的な京都の結納とは
結納品の内容や贈り方は、地域によって異なりますが、大きく関東式と関西式に分けられます。
関東式は、男女間で結納品を贈り合う「交わす」スタイルですが、関西式は、男性のみが結納品を贈る「納める」形式で行われるのが特徴的です。
ここでは、関西式を基本とした、京都で行われる代表的な結納儀式や結納品について解説していきます。
結納飾りの数 | 正 式:9品目 簡略化:7、5、3品目 |
結納飾り ※関西式は1品ずつ白木の台にのせる |
これらの結納揃えは充分に確認する意味もあり、一週間ほど飾っておく。 |
結納目録 | 結納品の数には入れない |
風呂敷 | 京都では道具類、風呂敷はすべて持ち帰る※関東地方では何も持ち帰ってはいけない |
結納返し | 関西式は一般的にはしない もしくは結納金の1割程度を贈る場合もある。 |
目録・受書 | 男性側:目録 女性側:受書 |
白木の台(結納品を飾る足つき台)にお祝いの品を一つずつのせ、飾りも豪華な関西式である京都の結納には、京都らしい心配りも見られます。
ただし、住んでいる地域や各家庭、世代によって風習や名称が違う場合もありますので、両家でよく話し合いながら結納品の内容や贈り方を決めましょう。
※画像は品物や並び順など実際とは違う部分もあるため、あくまでもイメージです。関東と関西の大きな違いである、白木の台への飾り方が分かりやすいかと思います。
京都の結婚式に伝わる習わし:扇子交換の儀式
結納の儀礼をする前に、結婚の意思表示をする儀式です。「見合い扇子」とも呼ばれています。
男性側が女性用、女性側が男性用の扇子を用意し、「あなたと結ばれたい」という願いを込めて取り交わす、という流れで行われるようです。
他にも「おさえ末広」「扇子納め」という呼び方もされており、大阪地方では男性側が男性用の、女性側が女性用の扇子を納めるそうですよ。
京都の結婚式に伝わる習わし:結婚祝いは熨斗と末廣を白蓋にのせる
京都の結婚祝いは、熨斗と末廣(扇)を添え、白木の台にのせます。それらお祝いの品を、広蓋(漆器)にのせて袱紗をかけたものを、風呂敷に包んで贈ります。
式場にお祝いは持参せずに、先様の自宅にお伺いして渡すのが正式な作法とされています。
丁寧なお作法を重んじる理由には、人と人との繋がりや家同士の結びつきを大切にしている京の教えが見えるようですよね。
京都の結婚式に伝わる習わし:「おため」「うつり」
「おため」「うつり」とは、結納・結婚祝い・出産祝いなど、お祝いを頂いた際に一帖の半紙(おため紙)を添えて、お祝い金の1割をお返しするお礼のことです。
「喜び事を移す」といった意味合いを持ったおためやうつりには、名前や金額は書かずに渡しますが、結納返しとはまた別のものです。
なお、「おため」や「うつり」には大きく三つの意味があります。
- 確かに受け取りましたといった確認
- お相手に喜びが「移るように」といった分かち合い
- 交際が深まり、縁が続くように
喜びごとを分かち合い、今後も続く縁を願う「おため」や「うつり」の習わしは、先様への気配りや思いやりを感じるものですよね。
なお、「おため」の習わしは、同じ県であっても地域やご家庭によっては、捉え方が異なることがあるので、親や地域のしきたりに詳しい方に相談しておくと安心ですよ。
京都の結婚式に伝わる習わし:お祝いは午前中に伺う
「お祝いに伺う際は、午前中のうちに」といった京都のしきたりは、先様への心配りからだと言われています。
午前中と限っておくことで、先様が午後からでも外出が出来るようにといった心づかいなんですよ。
京都の結婚式に伝わる習わし:お祝いごとは温かいこぶ茶でもてなす
お祝い事で出すお茶は、こぶ茶でもてなすといったお作法が、京都には伝わっています。
お祝いの席で出されることが多い桜湯ですが、「桜の花は散る」ことから、京都では桜湯ではなく昆布茶が主に出されるようです。
昆布は、「よろこんぶ」でおめでたいとされ、京都では好まれているようですよ。
もてなす際のお菓子は、「縁が切れる」といった連想をさせる、切って食べなければいけない羊羹などは避けてお出しします。
中に入っている餡を包んでいるお饅頭は、「包み込む」といった意味合いから、よく用いられるようですよ。
長きに渡って伝わる京都の習わしから古き佳き日本を知る
ご祝儀を載せる広蓋やご祝儀を包む袱紗など、結婚式では当たり前の光景ですが、これらは京都を含む近畿地方を中心として広がりを見せた習慣です。
婚礼行事や結婚式において引き継がれている京都の習わしには、その地域に住む以外の者にとっても、多くの気付きがあるといっていいでしょう。
簡略化されていく現代の婚礼文化ですが、古き佳き日本文化を取り入れたスタイルは、結婚の重きを感じます。
京都の習わしを元に、ご自身たちの地域に沿った文化や習わしを、結婚式のスタイルに取り入れてみるのも素敵ですよね。